1. はじめに:円安がずっと続くわけではない?
みなさんこんにちは、わんだらです。ここ数年、日本では「円安」と「インフレ」が大きな話題となっています。実際に、1ドル=150円前後まで円安が進行し、日常生活でも「輸入品価格の上昇」「生活費の増加」を肌で感じる方が多いでしょう。投資家にとっても、為替の変動は海外資産の評価額に大きな影響を与えます。
しかし、現在の円安がこのままずっと続くとは限りません。政治・経済情勢の変化によっては、近い将来「円高」に振れる可能性も高いといわれています。
「円高になったら海外旅行が安くなるし、輸入物価が下がって助かるのでは?」と期待する方もいるかもしれません。たしかに、円高のメリットは存在します。ですが、同時に見過ごせないリスクも多いのです。もし急速に円高が進むと、日本の景気や私たちの資産形成に大きなダメージをもたらす可能性があります。
そこで本記事では、円高がもたらすリスクと、その備え方について詳しく解説します。為替は誰にも予測できない難しさがありますが、だからこそ「円安ばかりに目を奪われず、円高のシナリオにも備えておく」ことが大切です。
2. 円高の基礎知識:為替レートはどう決まるのか
まずは為替レートのおさらいです。「1ドル=○○円」 という数字は、「ドルと円を交換する際の比率」を表しています。たとえば
- 1ドル=150円 → ドルの価値が高く、円が安い(円安)
- 1ドル=100円 → ドルの価値が下がり、円が高い(円高)
為替レートがどのように決まるかについては諸説ありますが、基本的には「通貨の需要と供給」で動きます。
- 日本が金融緩和を進めて市場に円がたくさん出回る → 円の価値が相対的に下がり円安へ
- 逆に金融引き締めをして市場から円を吸収する → 円の価値が上がり円高へ
また、アメリカなど他国の金融政策や、政治・経済状況(たとえば大統領選挙や外交関係の変化)によっても大きく動きます。つまり、「日本とアメリカの金融政策が今後どうなるか」を見ておくことが、円安・円高のシナリオを考えるうえで重要なのです。
3. なぜ「円安から円高へ」転換する可能性が高いのか
2022年以降、日銀は大規模な金融緩和を続けてきました。しかし、2025年からは徐々に金融緩和を縮小し、利上げなどの引き締め政策に転じる姿勢が鮮明になってきました。
一方、アメリカの中央銀行(FRB)は、2023年末〜2024年にかけて利下げをしています。米国の金利が下がれば、「利回りの高いドルを買って、利回りの低い円を売る」動きが縮小するため、逆に円高に振れやすくなるでしょう。
要するに、2025年以降は「日本が利上げ → 円高に向かう」「米国が利下げ → ドルが相対的に売られる」というシナリオが現実味を帯びてきているということです。為替相場は一旦トレンドが変わると、一気に進むケースも珍しくありません。今のうちに円高リスクを頭に入れておいたほうが良いでしょう。
4. 円高がもたらす3つのリスク
4-1. 外貨建て資産の評価額が一気に減る
投資家にとっては、円高 = 外貨建て資産の円換算額が減るということを意味します。たとえば1ドル150円から120円になれば、ドル建てで同じ金額を保有していても、円換算の評価額は20%減少するわけです。
しかも、株価の下落が重なると「ダブルパンチ」で資産が大きく目減りする可能性があります。リーマンショック時にも、多くの投資家が「円高+株安」による評価損に苦しみました。
「まだ若いから取り崩しは先だし大丈夫」という人も、急速に円高が進めば資金繰りに影響が出るかもしれません。会社の業績や景気に連動して、収入が減るリスクもあるからです。
4-2. デフレによる雇用の悪化
円高とデフレは相互作用で進みやすい面があります。輸入品が安くなると、国内企業は価格競争に晒され、モノやサービスの値段が下がりやすい。すると「お金の価値が上がって、モノやサービスの価値が下がる」デフレ傾向に向かうのです。
デフレ下では「モノが売れない → 企業は生産を増やさない → 雇用が伸びない・給料も上がらない」というサイクルが生まれがちです。さらに、円高で海外生産のほうが有利となれば、国内の雇用はますます悪化する恐れがあります。
4-3. 経済成長の停滞が招く負の連鎖
「輸出関連の大企業が儲からない → 税収が落ちる → 景気が悪化 → 失業率が上昇 → 社会全体が不安定化」という流れも、極端な円高では起こりうるシナリオです。
日本では少子高齢化が進み、社会保障費が膨れ上がっています。経済成長が止まれば、税や保険料でこれらの費用をまかなうことがますます難しくなるでしょう。すると国民負担が増え、家計を圧迫し、さらに消費が落ち込む悪循環に陥るリスクがあります。
5. 円高リスクに備えるための3つの対策
5-1. 資産の分散とバランスを意識する
最も基本的で重要なのが、「資産を1つのカゴに集中させない」 ことです。日本円・海外株式・債券・現金預金などにバランスよく分散しておけば、急激な為替変動があっても資産全体へのインパクトを抑えられます。
- 例:日本円50%、全世界株式インデックス50%
- さらに余裕があれば、債券やゴールドなどを組み合わせる
また、万が一会社の業績悪化が続いてリストラや給与カットが発生しても、共働きや副業などで複数の収入源を確保できればリスクを分散できます。人的資本の分散も含めて、総合的に考えるのがおすすめです。
5-2. 不必要な借金をしない
インフレ・円安局面では借金をしても比較的返しやすいと言われますが、円高・デフレにシフトすると借金の実質負担は増えるので要注意です。
- デフレ下で年2%の金利を払う → 物価下落が2%進めば、実質金利4%となり負担が重くなる
- 企業も借金返済を優先するため、人件費カットやコスト削減に動きやすい
結果的に、家計の収入が減って借金返済が難しくなる可能性も。将来的にどうなるか読めないからこそ、必要最小限の借金に留めることが安全策となります。
5-3. 選挙を含む政治参加で政策に関心を持つ
円高・円安を左右する大きな要素の1つが、政府や中央銀行の政策です。金融緩和と積極財政を取るのか、金融引き締めと緊縮財政を取るのかで、経済・為替レートは大きく変わります。
個人で政策をコントロールすることは難しいですが、選挙でどの候補者や政党を支援するか、あるいは政策に対して意見を持つかどうかは私たち次第です。
- 自分の資産を守るために政治や政策について学ぶ
- 選挙や世論を通じて、自分の考えに近い議員や政党を支持する
こうした行動の積み重ねが、結果的に「国全体で経済成長を目指すのか、それとも引き締め方向にいくのか」を左右していきます。
6. まとめ:見通せない未来に対する心構えとは?
- 為替相場は専門家でも当てるのが難しいが、近年の金融政策の変化を考えれば2025年以降の円高シナリオは十分にあり得る
- 円高には「物価の安定」「輸入コストの低下」などのメリットもあるが、急激に進むと外貨建て資産の下落やデフレによる雇用悪化、経済成長の停滞など重大なリスクがある
- だからこそ、「資産の分散」「借金を減らす」「政治に関心を持つ」 といった備えが不可欠
日々のニュースを追っていると、どうしても「今の円安やインフレが永遠に続くのでは?」という錯覚にとらわれがちです。ですが、世界経済は常に変動し、日本の政策方針も変わりつつあります。
見通せない未来に振り回されるのではなく、円安でも円高でも対応できる「備え」を持っておくことこそが、資産形成や生活防衛にとって最も重要ではないでしょうか。