「SBI vs 楽天のSCHD対決!高配当ETF型投資信託は買うべきか?NISA・税金・運用戦略まで徹底解説」

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近年、米国高配当ETF「SCHD」を組み込んだ投資信託が、日本の主要ネット証券であるSBI証券と楽天証券から相次いで登場し、大きな注目を集めています。特に楽天証券が先行して投入した「楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド(SCHD連動)」は、わずか数カ月で純資産総額が数百億円規模に達し、「高配当×米国ETF」という新たなインカム投資ブームを巻き起こしました。それに対抗すべく、SBI証券も低コストを武器に類似ファンドを投入し、まさに「SBI vs 楽天」の構図が鮮明化しています。
本記事では、SCHDファンドの基本スペックやインカム特性、SBIと楽天の信託報酬や分配方針の違い、NISA・特定口座での税金・外国税控除、さらには資産形成戦略として本当に「買う価値があるのか」まで、深堀りして解説します。

目次

SCHDとは何か?その人気の理由

「SCHD」とは、米国ETF「Schwab U.S. Dividend Equity ETF(ティッカー:SCHD)」を指します。このETFは安定的な高配当と堅実な銘柄選定で定評があり、米国投資家からも高い支持を得ています。その特徴は以下の通りです。

  • 対象銘柄数:約100銘柄
  • 選定基準:財務健全性や配当履歴などを重視
  • セクター上限:特定のセクターが25%を超えないよう制御
  • 組入銘柄上限:1銘柄あたり4%上限を設定

これにより、過剰な偏りや特定銘柄バブルへの依存を避け、長期的な安定した高配当とリターンを狙える点が支持されています。

楽天・SBIの2大ファンド登場と「熱いバトル」

2023年後半から2024年にかけて、楽天証券は「楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド(SCHD連動)」をいち早く市場投入。わずか1カ月で500億円超、さらに800億円を超える純資産を集めるほどの爆発的な人気となりました。

この成功を見たSBI証券は、2023年11月20日に「SBI・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)」のリリースを発表。信託報酬をわずか0.1238%程度と低く設定し、コスト競争で楽天に対抗。初日で150億円申込み突破という快挙を見せ、両社の顧客獲得合戦は一段とヒートアップしています。

SCHDとS&P500の比較:リターン・分配利回り・暴落耐性

リターン面
SCHDのトータルリターンは、S&P500(SPY)と比較すると概ね近似しています。ハイテク株が伸びる局面ではS&P500がリードすることもありますが、過去15~20年程度の長期で見るとSCHDが優位な期間も存在。ITバブルや特定セクターの過熱を抑える仕組みが功を奏していると考えられます。

配当利回り
SCHDは常時3%前後の分配利回りを維持してきた歴史があり、かつ一株あたり分配金は右肩上がり。この点が「高配当かつトータルリターンでも悪くない」と評され、インカム投資家にとって魅力的な存在となっています。

暴落耐性
ドローダウン比較をすると、S&P500との間で劇的な差はありません。財務基盤が安定している銘柄群を採用しているからといって、必ずしも下落相場で有意に強いとは限らない点には注意が必要です。ただし、過去の長期データではITバブル期など、一部の極端な相場でSCHDが有利に働いた可能性が示唆されています。

インカム重視の投資信託が人気なワケ

楽天・SBIが提供するSCHD投資信託は、S&P500のような王道インデックスと比較して分配金が多い点が受けています。多くの投資家は、値上がり益(キャピタルゲイン)重視から、安定的なインカムゲイン(配当収入)を得たいというニーズにシフトしつつあり、老後資金確保や早期リタイア(FIRE)願望に合致しやすいことが人気の背景といえます。

資産分散効果はある?他の資産・指数との相関を徹底検証

SCHDはバリュー寄りの高配当株中心で、S&P500やNASDAQ100と比べると多少性格が異なります。
相関関係を調べると、米国債(TLT)やゴールドとは相関が低く、株式ポートフォリオに別アセットを組み込むことでリスク低減が可能。ただし米国株同士での組み合わせ(SCHD × S&P500やNASDAQ100)では、相関が高いため分散効果は限定的です。分散を追求するならゴールドや債券等、異なるアセットクラスを検討するほうが効果的でしょう。

過去の事例から考える「コスト競争」と純資産効果

楽天とSBIは、過去にもVTIやVTを組み込んだファンドで競い合ってきました。当時、後発のSBIは低コストで参入しましたが、楽天は必ずしもコストダウンを追随せず、結果として両ファンドのリターンには僅差しか生まれなかったケースもあります。

純資産が多いファンドは固定費を薄められるメリットがあり、コスト差は思ったほどリターン差につながらない可能性も。実績を見る限り、「SBIが参入→楽天がコスト対抗」という直線的な動きは読みにくいです。よって、コスト競争だけを理由に乗り換えを焦る必要はありません。

税金・NISA・特定口座での有利不利:分配受取 vs 再投資

NISA口座
NISA枠は限られており、分配金を再投資する際にもNISA枠を消費する点に注意が必要です。無分配型のインデックスファンドならNISA枠を再利用せず内部で再投資が進むため、長期で見ると有利になりやすい側面があります。

特定口座
特定口座では外国税控除があるため、分配を出すタイプのファンドのほうが一部有利に働くケースも存在します。ただし、その分国内税の先払いが発生するため、トータルリターンで見ると必ずしも有利とは限りません。

シミュレーションによれば、短期(5年程度)では分配ありの方が外国税控除で有利な場面がある一方、長期投資(10年以上)では税の繰り延べ効果が効き、無分配型が有利になる傾向が強いです。

「配当控除」「外国税控除」とは?複雑な税制を理解しよう

配当控除
日本法人からの配当は、既に法人税が課税済の利益から出されるため、二重課税防止のために配当控除が利用可能です。しかし、SCHDは米国株式で構成されているため配当控除対象外。NISAでも配当控除は使えません。

外国税控除
外国株由来の配当には外国税がかかりますが、分配金が出るファンドなら確定申告で外国税控除を使って一部取り戻せます。これが無分配の場合は直接株を保有していないため外国税控除が働きにくくなります。

分配金重視か?トータルリターン重視か?選択フローチャート

判断材料

  • 絶対インカム(3%程度の配当収入)が欲しい → SCHDは候補
  • NISA枠をフル活用したい → 無分配ファンドが有利な場合多し
  • トータルリターン優先 → S&P500や無分配インデックスがシンプル
  • 長期でリターンを最大化 → 分配なしで税繰り延べ効果を狙うのが基本

一方で、「インカムが欲しい」理由がはっきりしていて、NISA枠に余裕があるなら、分配金を楽しむ目的でSCHDを組み入れるのも悪くありません。

避けるべきこと
定年後にインデックスから高配当ファンドへ「乗り換え」して配当生活へ、という計画は非効率な場合が多いです。売却益に税金が発生し、トータルリターンが落ちる可能性大。初めから自分のスタイルに合ったファンドを選ぶ方が賢明です。

結論:SCHDは買うべきか?戦略的な選び方

SCHD関連ファンドは、S&P500に肉薄するトータルリターンを維持しながら3%程度の分配利回りを提供するユニークな存在です。これが日本で投資信託として簡単に買えるようになったことは大きなメリットといえるでしょう。

  • インカム重視の方
    安定配当を求めるなら、楽天・SBIいずれかのSCHDファンドは魅力的。分配金を「自動受取」で楽しむのもアリ。
  • トータルリターン重視の方
    インデックス(S&P500や全世界、全米)で無分配型ファンドに投資し、税繰り延べ効果を最大化した方が有利になる可能性が高い。

とはいえ、S&P500と比較して極端に劣るわけでもなく、過去データから見れば両者は「ほぼ同等」のトータルリターンに近い水準です。そのため、細かな差異に神経質になる必要はないでしょう。「インカムが楽しめるS&P500もどき」と考えれば、選ぶ価値は十分あります。

今後の米国経済やセクターの循環によってリターンは左右されますが、SCHDは財務健全性と高配当戦略で人気を博し続ける可能性も大。SBIと楽天のコスト競争、純資産拡大による効率化、新NISA制度下での戦略など、動向は常にチェックしておくと良いでしょう。


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