円安局面での海外ETF投資のメリット・デメリット:2025年2月の視点から

当ページのリンクには広告が含まれています。

 みなさんこんにちは、わんだらです。ここ数年、為替市場では円安傾向が続いており、特に2022年頃から急速な円安が進んだことで、株式や債券などの金融資産を保有する投資家の間で「為替リスク」への関心が高まってきました。2025年2月現在においても、米国の金融政策や国内の経済情勢の変化を背景に、円安の流れが完全には解消されていない状況です。そのため、海外ETF(Exchange Traded Funds)に興味を持つ投資家が増えており、円安局面がもたらすメリットとデメリットを再確認する動きが活発化しています。

本記事では、円安局面における海外ETF投資のメリットとデメリットを2025年2月時点の視点から解説し、さらに国内ETFとの比較や出口戦略、リバランスのタイミングについても掘り下げます。投資経験者はもちろんのこと、これから海外ETFに投資を検討している初心者の方でも違和感なく読み進められるよう、できるだけ平易な言葉でまとめました。

目次

1. ここ数年の円安傾向が投資家心理に与える影響

1-1. 円安の主な原因

円安の背景としては、アメリカの金融引き締め局面が長期化していることや、日本国内の超低金利政策の継続が挙げられます。2022年から始まった米国の大幅な利上げは2023年後半以降も断続的に続き、結果的に日米金利差が拡大しました。2025年2月現在でも米国の金利は日本より大幅に高く、投資マネーが円からドルへと流れやすい状況が継続しています。

1-2. 投資家心理への影響

投資家心理としては、以下のような考え方が広がっています。

• 海外資産へ投資したい意欲の高まり

円で保有していると、円安時にはドルに換えるだけでも実質的な目減りを感じる場合があります。一方で、ドル建て資産(米国株や海外ETF)を保有していれば円安による資産評価額の押し上げが期待できます。

• 為替リスクへの懸念

ただし、今後の為替動向が読みにくい点は大きな不安要素です。円安がさらに進むのか、あるいは円高に振れるのかによって投資成果が大きく左右されます。特に資産形成の中・長期プランを考えるうえで為替リスクをどう織り込むかは重要です。

このように、円安は「海外投資への関心を高める一方で、為替変動がもたらすリスクへの不安も増幅させる」という二面性を持っているのです。

2. 海外ETFに投資する際の手数料・税制・為替リスク

ここからは、実際に海外ETFを購入する場合に必ず押さえておきたい要素である「手数料」「税制」「為替リスク」について順番に見ていきましょう。

2-1. 手数料

海外ETFの購入には、主に下記のような費用がかかります。

1. 売買手数料(取引手数料)

海外ETFを扱う証券会社を通じて、実際にETFを売買する際に発生する手数料です。証券会社ごとに異なり、定額制・約定金額に対する料率など複数のパターンがあります。最近では「〇〇ドルまでの取引は定額」など、投資家の利便性を高めるプランが増えてきました。

2. 為替手数料

円をドルに換えたり、ドルを円に換えたりする際に発生する手数料です。一般的には1ドルあたり数銭〜数十銭程度で設定されていますが、証券会社や銀行によってレートが異なります。積立投資などで頻繁に両替をする場合は、この為替手数料が積み上がるため、長期では無視できないコストとなることもあります。

3. 信託報酬(管理報酬)

海外ETF自体にかかる運用管理費用です。運用会社によって設定はさまざまで、0.03〜0.1%程度のものから1%以上の高コストな商品まで幅広いです。有名なS&P500連動型ETFや全世界株連動型ETFでは0.1%以下の低コスト商品が増えており、国内の投資信託と比較してもかなり低廉化が進んでいます。

▼ 表:主要なコストとその目安

コスト項目内容目安(2025年2月現在)
売買手数料証券会社を通じてETFを売買するときの費用約定金額の0.45%上限手数料等 (上限5〜20米ドルなど)
為替手数料円⇔ドルを両替するときの費用1ドルあたり0.02〜0.25円程度
信託報酬(管理報酬)ETF運用会社への管理費用0.03%〜1%以上 (商品により差)

(※上記の数値はあくまでも目安であり、実際の手数料は証券会社やETFによって異なる場合があります。)

2-2. 税制

海外ETFの税制を理解するために、まず知っておきたいのが「外国税額控除」と「配当課税(源泉徴収)」です。

1. 配当にかかる海外課税と国内課税

米国ETFの場合、分配金(配当)に対して最初に米国で10%(条約により軽減税率適用)の源泉徴収が行われ、その後、日本でも20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税)の課税対象となります。

つまり、米国と日本の両方で課税される二重課税の状態ですが、「外国税額控除」の仕組みを利用すれば、米国で支払った税金の一部または全部を確定申告時に控除できる場合があります。

2. 運用益に対する課税

海外ETFを売却した際の運用益(キャピタルゲイン)も、通常の国内株式や投資信託と同じく20.315%の申告分離課税がかかります。NISA口座やつみたてNISA口座を利用できる場合は非課税枠が活用可能ですが、一般NISAにおいては海外ETFでも同様に非課税対象となります。2024年から新NISA制度がスタートし、2025年2月現在は施行後2年目となっているため、非課税投資枠の拡充や一本化された制度を活用する投資家が増えています。

2-3. 為替リスク

海外ETFにおいて最大の特徴ともいえるのが「為替リスク」です。為替リスクは大きく分けて以下の2パターンの影響を受けます。

1. 円安時の評価益(プラス要因)

ドル建てで見たときに株価が変わらなくても、円安になれば円換算した資産価値は上昇します。たとえば、1ドル=100円のときに1,000ドルだった資産は10万円相当ですが、1ドル=140円になれば14万円相当へと増えます。

2. 円高時の評価損(マイナス要因)

逆に急激な円高が進むとドル建て資産の価値が目減りします。株価は上昇していても、為替変動による影響で円ベースのリターンが下がることも多々あります。海外ETF投資は株価リスクに加え、為替リスクを同時に負うことになるため、運用プランの設計時には慎重な検討が必要です。

3. 主要な海外ETFと国内ETFの比較

ここでは、円安局面で意識される主要な海外ETFと、それらを日本国内でも買いやすくした国内ETFを比較しながら、投資家が検討すべきポイントを整理します。

3-1. 代表的な海外ETFの例

米国株式市場で最も取引が活発なETFとして、以下のような代表例があります。

• VOO(Vanguard S&P 500 ETF)

S&P500指数に連動するETF。経費率(信託報酬)が0.03%と非常に低い点が魅力。

• IVV(iShares Core S&P 500 ETF)

同じくS&P500に連動。運用会社はブラックロックで、VOOと並び人気。経費率は0.03%〜0.04%程度。

• QQQ(Invesco QQQ Trust)

NASDAQ100指数に連動。IT・ハイテク銘柄が中心で、近年のハイテク株ブームを背景に取引量が多い。

• VTI(Vanguard Total Stock Market ETF)

米国の投資可能な株式市場ほぼ全体を網羅。小型株まで含めた分散が魅力。

これら海外ETFは、アメリカの証券取引所で売買されるため、先述したように証券会社の口座でドルを用意して購入する流れが基本です。コストが低く、多様な銘柄に分散投資できる点が世界中の投資家から支持されています。

3-2. 代表的な国内ETFの例

日本国内にも、海外の株式指数を連動対象とした「国内ETF」が複数上場しています。たとえば、S&P500指数に連動するETFやNASDAQ100連動型ETFも存在し、円建てで売買ができる点が特徴です。以下は一例です。

• iシェアーズ S&P 500 ETF(銘柄コード:1655)

ブラックロック運用のETFで、S&P500に連動します。東京証券取引所で円建てで購入可能。

• NEXT FUNDS NASDAQ-100連動型上場投信(銘柄コード:1545)

NASDAQ100指数に連動する国内ETF。為替ヘッジなしのタイプが一般的です。

国内ETFは円建てで売買できるため、為替両替の手間や為替手数料を省略できますが、実際には為替リスクが完全になくなるわけではありません。ETF自体の基準価額は、組み入れ銘柄のドル建て評価額を円換算して算出されるため、海外ETF同様に円高円安の影響は受けます。

3-3. 海外ETFと国内ETFの比較表

項目海外ETF国内ETF
売買通貨ドル(米国ETFの場合)
為替手数料必要(円→ドル、ドル→円)不要(円のまま購入可能)
信託報酬低コスト(0.03%〜0.1%程度の商品が多い)やや高め(0.1%〜0.5%程度の商品が多い)
流動性取引量が多くスプレッドが小さい場合が多い銘柄によっては流動性が低くスプレッドが大きい
税制面外国税額控除の手続きが必要国内株式と同様の扱い(特定口座で管理可)

• 海外ETFのメリット: 低コスト・高流動性が期待できる。

• 海外ETFのデメリット: 為替手数料と外国税額控除の手続きが必要になること。

• 国内ETFのメリット: 円建てで売買でき、手続きがシンプル。

• 国内ETFのデメリット: 海外ETFよりも経費率がやや高い傾向にあり、取引量が少ない銘柄も多い。

4. 円安時の投資妙味と出口戦略

4-1. 円安がもたらす投資妙味

円安局面では、ドル建て資産を保有しているだけで円換算時の評価額が上昇する可能性があります。たとえば、海外ETFを長期保有している投資家にとっては、円安が進むと「為替差益」の恩恵を受けることができます。

• 円安加速時の短期的利益

「円安がさらに進む」と予想する場合、今のうちにドル建て資産を持つことが有利になるかもしれません。ただし、為替相場の短期予想はプロでも困難とされるため、投機的な売買はリスクが高い点に注意しましょう。

• 長期投資との相性

もともとS&P500や全世界株式に長期積立で投資している人は、円安時には為替差益を享受できる一方、円高に振れても時間をかけて為替差をならしていく戦略が有効となります。

4-2. 出口戦略の重要性

投資を始めたからには、いずれ何らかの形で資金を「円」に戻す必要が出てくる場合があります。老後資金の取り崩しや大きな支出のタイミングなど、出口戦略(売却のタイミング・方法)はとても重要です。

1. 為替レートを見ながら段階的に売却する

将来的に円高に振れる可能性がある場合、大きな金額を一度に円転すると為替差損のリスクが高まります。そこで、複数回に分けて売却することで、為替変動リスクを分散する方法があります。

2. ヘッジ手段の活用

ETFの中には為替ヘッジ機能が組み込まれた商品も存在します。ただし、ヘッジコストが発生するため、長期保有するほどコストが増える点に注意が必要です。

3. 配当・分配金の活用

海外ETFは定期的に配当や分配金を支払うものが多いため、そこから生活費や再投資の原資を得ることも可能です。老後資金の取り崩しを目的とする場合は、配当再投資が基本的な戦略ですが、円安であれば配当の円換算額が増えるため、円ベースでのリターンが高まります。

5. 為替相場変動とリバランスのタイミング

5-1. 為替相場の変動要因

為替相場は、以下の要因によって日々大きく変動します。

• 金利差: 米国金利と日本金利の差が広がると円安方向に、逆に縮まると円高方向に動きやすい。

• 政策要因: 日本銀行(BOJ)の金融緩和策の変更、米国FRBの利下げ・利上げ観測など。

• 地政学リスク・経済指標: 米国の雇用統計、GDP成長率、各国の政治リスクなども為替を動かす材料となる。

2025年2月時点では、米国の利上げサイクルが一段落しつつあるとの観測もありますが、インフレ率の動向次第では再度の利上げや、逆に早期の利下げが予測される場面もあります。日本国内では、超低金利からの転換が遅れているという見方があり、日米金利差が依然として円安方向をサポートしやすい状況です。

5-2. リバランスのタイミングとコツ

資産形成の基本は「分散投資」と「定期的なリバランス」です。為替相場の変動が大きいときこそ、リバランスの必要性が高まります。

1. リバランスの原則:目標アセットアロケーションの維持

例えば、「国内株式30%、海外株式40%、債券20%、現金10%」という目標を立てたとき、海外株式の価格上昇や円安進行によって海外株式比率が50%を超えてしまうと、リスク許容度を超える可能性が出てきます。この場合は一部を売却し、国内株式や債券などの比率を再調整することが必要です。

2. 為替レートだけを理由にリバランスするのは注意

「円安だから売る」「円高だから買う」といった短期視点での行動は、タイミングを誤るリスクが高いです。あくまで目標アロケーションに照らし合わせながら、定期的(年1回や半年に1回など)にチェックすることが理想的です。

3. 逆張り的なリバランスのメリット

アセットクラスの値上がり・値下がりに合わせて、目標配分に戻す行為は「逆張り」的な投資行動を促します。過熱感がある相場で一部利益を確定し、割安感のあるアセットに資金を回すことで、長期的なリターンの安定化が期待できます。

▼ 参考グラフ:リバランス前後のアセット比率イメージ

(例)
リバランス前:海外株50%、国内株25%、債券15%、現金10%
↓
リバランス後:海外株40%、国内株30%、債券20%、現金10%

上記のように、海外株の高騰と円安により海外株の比率が過大になった場合、売却して他の資産に振り分けるイメージです。

6. まとめ

2025年2月の視点で見ても、円安基調は完全には収まらず、投資家にとって為替リスクは引き続き重要なテーマです。そんな環境下で海外ETFへの投資を検討する理由として、以下のポイントが挙げられます。

1. 低コストで幅広い分散が可能

海外ETFは運用コストが低い商品が多く、またS&P500や全世界株式など世界を代表する株式指数に手軽に投資できます。長期で考えるなら、信託報酬の差がリターンに大きく影響することを踏まえたいところです。

2. 為替手数料と税制の理解が不可欠

為替手数料の積み上がりや、外国税額控除の手続きなど、国内投資よりも煩雑になる部分があります。一方で国内ETFを利用すれば円建てでの取引が可能ですが、経費率がやや高い、流動性が低いといったデメリットも存在します。

3. 円安の恩恵とリスクをセットで考える

円安が進行するほど、ドル建て資産を円換算した場合の評価額は大きくなります。しかし、逆方向の動き(急激な円高)もあり得るため、リスクヘッジ策や出口戦略が欠かせません。

4. リバランスでリスクをコントロール

円安・円高に左右されず、定期的なリバランスでポートフォリオ全体のリスク水準を保つことが大切です。

最後に

海外ETFは、長期投資家にとっては魅力的な運用先の一つですが、為替という追加リスクを考慮したうえで投資計画を立てる必要があります。円安局面が続くなかで「割高感があるのでは?」といった懸念を抱く人もいるかもしれません。しかし、長期的な資産形成という観点では、円安・円高にかかわらず、自分の資産配分に沿ってコツコツと積立投資を継続することが王道といえるでしょう。

一方で、老後資金の取り崩しや大きな支出のタイミングを見据えている投資家は、円安時に少しずつ利益確定を行う方法や、円高時に買い増しを行う方法などを検討する価値があります。自分のライフプランやリスク許容度を見極めつつ、為替動向を上手に織り込みながら投資を続けていくことが大切です。

目次